製作事例
- ワイヤー放電
ワイヤー放電加工サンプル製作事例:細やかなつげ櫛を高精度に加工
- サイズ
- 3.5×10.5、5.5×10、5×8.4
- 材質
- SUS304
- 板厚
- 0.8
- 公差
- ±0.005
- ピッチ
- 0.25±0.005
当社の所在する京都らしさを金属加工で表現したいと考え、極小サイズのつげ櫛を製作しました。ワイヤー放電加工によって高精度に仕上げるためのプログラムや、作図のポイントをご紹介します。
サンプル製作の背景
微細な加工を得意とする大東技研では、ワイヤー放電などの加工方法で細やかな部品制作を行っています。社内サンプルとして、京都らしいものを微細な加工技術で表現するため、指の先端に乗るほどのサイズでつげ櫛を制作しました。機械部品だけでなく、装飾品や美術品の加工にも対応できることを広くアピールすることを目指しました。
設計のポイント
設計・加工ポイントは下記3点です。
1. ワイヤー放電加工による高精度加工
今回のサンプルは、ワイヤー放電のみで加工しています。φ0.05のワイヤー線で、つげ櫛の内側の溝を数回削り、外形は1回で切り取りました。これまで櫛形形状の機械部品を、高精度加工する中で蓄積したノウハウを、つげ櫛の加工に生かしています。
2. 適切なプログラム設計
粗加工・中仕上げ・仕上げの3つの工程をプログラムし加工を行いました。ワイヤー放電加工では、放電の熱エネルギーによって加工するため、その量を各工程で調整する必要があります。
まず粗加工ではスピードを重視し、面を大まかに削り出します。続く中仕上げでは、徐々に放電の強さを弱め、面の精度を高めました。また中仕上げは2回行い、ワイヤーを内側に寄せるオフセット量(寄せ量)を調整しました。
3. つげ櫛の美観を再現する作図
今回のサンプルの最も重要なポイントは、作図を一から行った点です。装飾品の製作は初めてだったため、前提とする図面がありませんでした。どれほど複雑な図面であっても、どの順で図を描くかを考え、必要な線と不要な線の見極めを的確に行うことが大切です。
作図の経験が少ないと、完成までに経験者の数倍の時間がかかる場合もあります。技術者は、線の色を変え判別しやすくするなどの工夫を重ねて、作図の力を向上させています。今回の事例でも、作図の経験と深い理解が、つげ櫛の美観を図面に再現することにつながりました。
当社の技術担当者からのコメント
一番大切にしているのは、新たなものづくりにチャレンジして、これまでの技術の更に上を目指すことです。サンプル製作に取り組むことで成功や失敗の経験値を積んでいます。
今回は、「たとえ加工が不可能だと思われるような形状・櫛幅であっても、できる限りの技術を駆使しよう」という目標を持って製作に挑みました。このサンプルがあることで、お客様から「どのくらい細かな加工ができますか?」とお問い合わせいただいたときの説明材料になります。また、どこまで加工できるか自分自身の判断基準にもなります。
サンプルをただ作るのではなく「限界に挑戦したい」と意識しての加工だったため、思い描いていたつげ櫛を完成させることができ、自信につながりました。